Q:コミュニケーション研修を受ける前に、どんな課題がありました?
そうですね、正直「大きな課題があった」というほどではないと思っているんです。
ただ、どちらかというと私は、自分の気持ちや考えを外に出すよりも「秘める」タイプだと思います。
社会に出て働く中で、本当は表現したいことがあっても、飲み込んで、自分の中で消化していたことが多かったですね。
――消化できていたんですね?
はい、意外と自分の中でうまく消化はできる方なんです(笑)。
だからこそ、周りからはあまり困っているようには見えていなかったかもしれません。
でも、伝えることでより良い関係がつくれるんだろうなという思いは、どこかにありました。
Q:研修を受けたことで、ご自身にどんな考え方や行動に変化がありましたか?
はい、やっぱり一番変わったのは、「思っていることをどう伝えたら伝わるのか」っていう視点です。
――具体的には、どんな場面から?
最初は、現場の実践の中での「提案」ですね。
たとえば、子どもに提供している活動について、「もっとこうしたら良くなるかも」というアイデアを伝えるときに、
「私としてはこう思うんだけど…」というスタンスで、状況や問題点、改善案を整理して伝えるようにしていました。
それが、研修を受けてから意識的にできるようになったことの一つです。
――その後、立場も変わってきたんですよね?
そうなんです。立場が少しずつ上になっていって、今度は「言う側」から「聞く側」へと変わっていきました。
相手の話を「聞き出す・引き出す」、そして「どう返すか」を考えるようになったんです。
そこでも、研修で学んだ聴き方がとても役立ちました。
――なるほど。それでも葛藤もあったと。
そうですね。指導する立場になると、自分の中にある「〜すべき」が出てきてしまって。
でもそれって、自分の価値観かもしれないな、という葛藤がありました。
――そのときにアンガーマネジメントの学びが活きたんですね?
はい、中里先生のアンガーマネジメントの研修で出てきた「せめて」というキーワード。
あれがすごく助けになりました。今では、主任や後輩にも共有してるんですけど、
「せめて、どうしたらよかったの?」って問いかけることで、自分の中で一番引っかかっている部分が見えるんです。
――境界線がはっきりするような?
そうです。「あ、私ここに一番思いがあったんだ」って気づける。
緊張がふっとゆるむ感じがありますね。これは今でもよく使っています。
――聴き方にも変化があったとのことですが?
はい、相手の行動の背景を知りたいという思いが強くなって、
本人の立場に立って考えられるような「投げかけ方」ができるようになってきました。
「いい・悪い」じゃなくて、その人がどう感じたかを大切にするように。これも研修で学んだことです。
――伝え方についてはどうですか?
「私は〜と思う」っていう主語を自分に置く言い方ですね。
これを使うことで、相手と自分の境界線をちゃんと引ける感覚があります。
みんなの総意としてではなく、「私の意見」として伝えられる。
ある意味、前置きのように使うことで、相手も受け取りやすくなると思います。
Q:研修の進め方や雰囲気はどんな印象でしたか?
はい、とても心理的安全性が確保されている場だと感じました。
特に、参加者同士のプライバシーへの配慮がしっかりされていて、誰もが安心して話せる空気がありました。
また、中里先生の応答を見ていて、「ああ、そういう肯定の仕方もあるんだ」と、関わり方のヒントもたくさん得られました。
そういう応答の積み重ねが、場全体の安心感につながっていたんだと思いますし、「自分は自分の考えを持っていていいんだ」と、素直にそう思える時間でした。
Q:そのほか、特に印象に残っていること、心に残っている言葉は?
はい、「感じてOK」という言葉ですね。これは本当に大きいです。
施設長という立場になってからは特に、自分の気持ちをちゃんと感じることの大切さを実感しています。
感情を抑え込まずに、「いま、こう感じてるんだな」と自分にOKを出せるようになったことで、心の余白ができた気がします。
このキーワードは、職員同士の会話でもよく出てきますね。
Q:そのほかにも、順番に全員が受講していることの効果はありますか?
たとえば、新卒1年目の職員には、「まだできない自分」をちゃんと受け止めようとしている姿が見えるんです。これは、研修で「存在レベルでOK」っていう考え方を学んでいるからだと思います。
また、先輩職員たちの中には、「そのときどうだった?」っていう投げかけを自然にしている人が増えてきていて。それって、中里先生の講義やワークの中で、繰り返し体験してきた関わり方なんですよね。
相手の言葉を否定せずに、まず受け止める。そして、「じゃあ、ここからどうする?」と未来に向かって話をつなげていく。
そういうスタイルが、園全体にじわっと浸透している感じがあって、「これって、うちのチームの土台になってきてるな」と実感することがあります。
Q:講師としての中里先生はどんな人に見えている?
そうですね…まず「やわらかい」っていう印象があります。
どんな世代の人にも、どんな性格の人にも、同じように耳を傾けて、ちゃんと受け止めてくださるんです。そこに一切ブレがないというか、スタンスが崩れない方だなと感じます。
誰が相手でも、聴く+受け止めるという姿勢をずっと保ってくださっていて、それが研修の場の「心理的安全性」にそのままつながっている気がします。
「この人の前だったら、自分のことを安心して話していいんだな」って、自然に思える。だからこそ、学びに集中できる空気があるんだと思います。
Q:最後にウェブサイトを見ている人に、一言かけるとしたら?
「一度話してみたら?」って、そんなふうに声をかけたくなります。
安心感のある方なんで、「話してみるとわかるよ!」って。